この施主(医療法人久康会)とはメイ建築で病院の方の増築計画を担当させてもらった時からの付き合いである。 院長は大変アバンギャルドな方で、こちらの方がいつも刺激を与えられる。 この計画は改修工事ということから、当初設計者抜きで計画が進められていたらしい。 計画開始から1ヶ月程たった頃、「やはり岩野を入れよう」と院長自ら強く主張して下さったそうである。 ありがたい話である。 院長のコンセプトは非常に明快であった。 高齢者・障害者の介護施設だが、その従来的な施設イメージを打ち破る。 要介護者が大人の社交場として、遊び感覚で通えるような今までにない環境を創造する。 というものであった。これから政策上必ず求められるであろう介護予防の観点に立ったコンセプトである。 既存建物は1階がピロティ駐車場、2階がホール+住居、3階が執務室という築30年の事務所ビルであった。 改修の方針は1階がメディカルフードセンター、2階がナイトクラブ的な、3階がフィットネスクラブ的な空間を 創るというもの。1階は機能的に、2階は妖しく、3階は涼やかな、というイメージで合意し設計が開始された。 計画上一番頭を悩ませたのが既存建物の制限の中で、ゲストとスタッフ更には厨房動線を各々明快に分離した上で、 如何にゲストのアプローチ空間を演出するか、という事であった。 本計画では場面変化を劇的に付けることによってそれを空間処理した。 駐車場から自動ドアへと導くベクトルの壁、そして自動ドアから即エレベータードア。 このベクトル壁はゲストアプローチと宅配弁当の配膳下膳空間を分節する境界でもある。 入り口は天井を若干低くし、あえて穴蔵のような空間とした。滞在時間を短くするためエレベーターは2台設置。 更に1階から上階への食事配膳とゲストアプローチが交差しないよう、厨房より30cm床を上げ停止階を分けた。 EVは2方向アクセスとし進行方向に沿って2階の吹き抜け階段ホールに辿り着く。この空間は真っ白で統一。 大きくあけたFIX窓から北側の落ち着いた光がそそがれる。ここがゲストの為のエントランスホールである。 既存建物でのメイン玄関・階段は逆にスタッフ専用とした。この部分の改造だけで7百万円近くかかってしまった。 (EV・鉄骨階段新設含む)しかし7百万円以上の価値は絶対にあるし、是非金を掛けるべきと判断した。 内部の造作コンセプトは構造的な形を消し去ることであった。 まずは家具や曲線で完全に柱型を消した。その処置を床面積が既存より小さくならないよう配慮しポイントで行った。 次に梁型。ここは床から梁下の高さが2.7mとこのような施設としては非常に低かった。ここに空調などの設備機器・ 配管収まり等を考えると天井高さは2.5mを切ってしまうことになる。この面積で天井高さ2.4mはバランスが悪い。 だから設備計画はかなり入念に行った。そして必要な部分だけ天井を大胆に下げ、下がり天井をデザイン処理した。 最後にピンクのネオンサイン。これは、はじめ概念を打ち破るために・・・という話の中、例えの様に出た話だった。 でも、おもしろいかも・・・とずっと思っていた。 設計完了説明の時、怒られるの覚悟で「ここにこのサイズのネオンサインを付けます」と言ってみたら、 「うん。いいね」と院長。そんな院長が大好きです。 このネオンサイン。シンボリックで自分は大変気に入ってます。